最近、「AIのおかげで個人でもアプリが作れるようになった」という話を本当によく耳にします。少し前まで、専門の会社にお願いしなければ到底手が届かなかったようなものが、いまでは少し詳しい人が“なんとなく”触っているうちに形になってしまう。技術がここまで一般化したのかと思うと、素直にすごい時代になったな、と感じます。
開発会社のほうも、すでにAIをうまく使い始めています。作業効率が上がり、納期やコストがじわりと下がってきているという話もよく聞きます。こうした技術がさらに安く、身近になり、個人にも自然に降りてくるようになれば、社会全体にとって大きなプラスになるのだろうと思います。
そんなことを考えていた矢先に、少し気になる話を聞きました。
同僚が通っていた学校の同窓会で使うシステムを、ITに詳しいOBの方が自作したらしいのです。それ自体は「すごいね!」で終わりそうな話なのですが、どうも元のサービスを解析して作り直した、という裏話もあったようで、そこで業界の片隅にいる身としては、ちょっとモヤッとした気分になりました。
解析すること自体がそのまま法律違反というわけではないのですが、利用規約で禁止されている場合もありますし、似すぎた作りになれば著作権や営業秘密の問題に触れることもあります。もちろん、外から聞いただけの話で断言はできません。ただ、気軽に語られる“解析して作ったんだ”という一言に、どこか落ち着かない気持ちになったのは事実です。
もう一つ気になったのが、「運用はどうなるのだろう?」という点でした。
同窓会といえど、扱うのは何百人、場合によっては千人単位の個人情報です。住所やメールアドレスが入った名簿は、やっぱり慎重に扱うべきものだと思います。今の個人情報保護法は、昔のように「大規模なところだけが対象」という考え方ではありません。営利・非営利に関わらず、継続的に情報を管理するなら、一定の安全管理義務が求められます。同窓会のような任意団体でも、その流れから完全に外れているわけではない、というのが現実です。
もちろん、プライバシーマークやISMSのような認証を取っていないからと言って、それだけで法的に問題というわけではありませんし、そこまで構えるのは現実的でもありません。ただ、個人が趣味の延長で作った環境に重要な個人情報が集まるとなると、どうしても不安は残ります。機密情報の管理、バックアップ、運営者が変わるときの引き継ぎなど、企業なら当然検討する部分が曖昧になってしまいがちです。
「同窓会なんだから、そこまで言わなくても」という気持ちもよく分かります。
ただ、扱っているのは仲間の個人情報です。もし何か問題が起きたとき、悪気がなかったとしても、どう対応すればいいのか困ってしまう状況が想像できてしまいます。
AIが今後さらに進化して、運用やセキュリティのような部分まで自動で面倒を見てくれる時代も、もしかしたらそれほど遠くないのかもしれません。もしそんな未来が来たとき、システム会社はどんな付加価値を提供していくのか、また新しい悩みが出てきそうです。技術が便利になるほど、人間の役割は少しずつ変わっていくんだろうなと、そんなことをぼんやり考えていました。