最近、夜道を歩いていてバイクの排気音が遠くから響いてくると、ちょっと気になることがあります。昔から「うるさいなあ」と思っていましたが、海外の話を聞くと、日本とは随分アプローチが違うものだなと感じるようになりました。

日本の場合、騒音はどうしても「迷惑行為」くらいの扱いで止まっているように思います。もちろん法律はあるんですが、取り締まりの方法が現行犯中心なので、どうしても“捕まる人は運が悪い人だけ”みたいな印象になりやすいですよね。

ところが、ヨーロッパを見ると考え方の入り口から違うようです。たとえばフランスでは、普通の住宅街や公園の近くに“騒音カメラ”が置かれていて、一定以上の音を出すと自動的に違反として扱われます。機械が音の大きさだけでなく、どの方向から来ているかまで判断して、車のナンバーを撮影して通知するという仕組みです。

ロンドンの導入実験も有名で、ここでは構造が複雑な路地でも、マイクの配置とソフトウェアでかなり正確に車両を特定できるようになっているそうです。試験の様子を見た人の感想では、「むしろ速度カメラより公平」と言われることもあるとか。“音だけで判断するから贔屓がない”という意味だそうです。なかなか面白い考え方ですよね。

さらにスイスの取り組みは、少し日本とは別次元です。特定の山岳ルートでは「特に騒音が大きいとされる車種」は、時間帯によって通行が制限されています。車種名まで具体的に指定されているので、「そのモデルは昼間だけ通っていいよ」「この区間は通行禁止だよ」といった、かなり細かい運用がされています。これは観光地の静けさを守るための措置ですが、実際にこのエリアの住民は効果を実感しているといいます。

オランダも独自の取り組みがあって、特定の住宅街に“騒音ホットスポット”という考え方を導入しています。あるポイントで大きな騒音が繰り返し観測されると、自動的に行政と警察が共同でパトロール体制を強化します。つまり、苦情が出てから対策するのではなくて、データの蓄積によって「静かさの維持」を管理していく方法です。

こういった動きを見ると、ヨーロッパでは「静かな環境で生活すること自体が権利」という意識があるように感じます。これは決して大げさな議論ではなく、睡眠を妨害するレベルの騒音は健康被害につながるという研究が数多く紹介されているからだそうです。だから制度も“迷惑だから”ではなく“健康を守るために必要だから”という位置づけになりやすいのでしょうね。

アメリカもまた別の方向性を持っています。全国的な基準はそれほど強くありませんが、ニューヨークなど大都市は逆に厳しくて、違法マフラーの罰金が日本円で十万円を超えることもあります。カリフォルニアでは、警察官が持ち歩けるタイプの騒音測定器を使ってその場で検査しますし、結果によっては修理命令が出て再検査が必要になります。
地域差は大きいものの、「街の環境を守ろう」という姿勢ははっきりしています。

それに比べると、日本はどうしても制度よりも運用が追いついていない印象があります。技術的にできないわけではないと思うんですが、監視カメラや自動取締りに対して慎重な声が根強くあることもあり、導入が遅れているようです。
ただ、ヨーロッパの人たちにとっては、監視の問題より「静かな生活のほうが優先」という価値観があるようで、このあたりは国民性の差と言えばそれまでですが、考え方の違いとして興味深いところです。

こうやって見ていくと、日本でももし本気を出せば、騒音カメラを設置することも難しくないでしょうし、違法マフラーの販売そのものを規制することもできるはずです。すでに速度カメラや駐車監視の仕組みがあることを考えると、技術的なハードルは高くないと思います。

ただ、最近少し実感しているのは、こういう問題は意外と「市民の声」が重要だという点です。自治体の議会で取り上げられれば警察も無視できませんし、重点パトロールが組まれることもあります。静かな住宅地を望む人は多いはずですし、もう少し長い目で見れば、地域単位で対策が進む可能性は十分あるのかなと感じます。

結局のところ、騒音バイクの問題は「少数の楽しみ」と「多数の生活」がぶつかるところにあります。ヨーロッパが先に制度を整えたのは、そこを“健康問題”として捉えたからでしょう。日本も、迷惑行為という枠を超えて、生活の質に関わるテーマとして少しずつ議論が深まっていくといいな…と、そんなふうに思っています。

投稿者 Tanaka